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サタンへの勝利  ヨハネの黙示録第一二章

 小羊が七つの封印を開き、次には七人の天使がラッパを吹きました。その一つ一つで開かれたのは、神に背く人々に対する災害の幻でした。それでは、信仰者の側ではいったいどういうことが起こるのか、それが一二章から記されています。

 まず最初に女と竜が登場します。この竜は、女から男の子が生まれてきたらその子を食い尽そうと待ち構えています。「女は男の子を産んだ。この子は、鉄の杖ですべての国民を治めることになっていた」のです。「鉄の杖ですべての国民を治める」という言葉は、詩二篇九節の言葉です。詩二篇は王の即位の詩です。そして七節には「お前はわたしの子、今日、わたしはお前を生んだ」と語られています。従って「生んだ」という言葉は即位を意味しています。

 そうすると、ここで女が生んだ男の子はキリストを指していることになります。そしてキリストが生まれたということは、天上で即位をしたということになります。「子は神のもとへ、その玉座へ引き上げられた」のです。

 ヨハネが天上で目撃していたのは「屠られたような子羊」でした。つまり、イエスの死ということがその要素になっています。キリストは地上での死を通して勝利をし、天上で即位なさったのです。

 二番目の段落には竜とミカエルが登場します。ミカエルはイスラエル民族の守護天使です。この守護という働きは、天上においてイスラエル民族と敵対する者、つまりサタンと戦うという形でなされます。そしてサタンは負けて地上に落とされました。サタンは決定的に敗北したのです。ここではミカエルという形として、キリストが天上でサタンに決定的に勝利したことを意味しています。これは、信徒に対しては救いの約束が与えられたことを意味しています。

 しかし、サタンが投げ落とされたということは、地上にサタンが来たことになります。キリストの天上での勝利が、直ちに地上に幸福をもたらすのではなく、ことに信徒たちにとっては迫害の開始であることを伝えようとしています。

自分たちが迫害にあっていることは悪魔に攻められていることだと思っているけど、本当は、悪魔が投げ落とされてしまったから起こったことなのだと伝えているのです。それは悪魔の決定的な敗北の反映なのだ、と。あなた方が迫害を受けるということは、あなた方が見捨てられたことでは決してない。悪魔の力が強大だということでもない。むしろ、悪魔の力が敗れたからこそ、今、迫害が始まっているのだ。しかし悪魔は「残された時が少ないのを知った」とあるように、迫害の期間は長くはない。あとわずかの辛抱をすればよいのだ、と信徒を励ましているのです。

 

愛澤 豊重

(菊名 2016年11月号  No.14掲載)